農村に吹き始めた新たな風
農業ジャーナリスト 青山 浩子
 「田舎でシュウカツ(就活)しよう」と、若者に田舎での農業体験・就業をよびかける「田舎会社ネットワーク」という組織がある。後継者不足を抱える農家と若者をマッチングし、田舎で就農したり、起業する際の支援をする。20人のスタッフも20~30代と皆若い。
 代表の山根多恵さん(30)自身も田舎再生の実践者だ。島根県で廃業しかけた旅館を引き継ぎ、再生させた。現在は2代目おかみの三原綾子さん(25)が切り盛りしている。三原さんがこの道を選んだ理由は「農村衰退への危機感」とともに「感動があるから」。旅館は週末営業。平日は「地域貢献日」とし、耕作放棄地の再生や地域文化の継承にあたる。共感する若者をインターンとして受け入れ、その中から起業家も誕生した。
 09年から活動範囲を全国に拡大。農家や企業など80カ所に受け入れてもらい、田舎での体験、就職を希望する若者を派遣している。それが「田舎でシュウカツ」だ。
 最近はアジア各国に若者を派遣し、農業支援や地域貢献に取り組んでもらっている。農村での高齢化、後継者難は日本を超え、すでにアジア全体の問題だ。日本の若者を受け入れることでアジアの農村にも活気が生まれ、参加した若者も生き方の選択肢を増やすことができる。今春から2人の女性がカンボジアとスリランカに出向き、農村で汗をかくという。山根さんは「田舎で問題解決し、次に国境を超えて現地の人たちと問題を解決していく。市民による平成の開国こそいま求められている」と語る。
 震災や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)問題に揺れる農村に、豊かさの中で生まれた若者たちが関心を向け、行動を起こしている。成熟化した日本に吹き始めた新しく、頼もしい風だ。
《出典》毎日新聞 (23/03/23) 前頁      次頁